つばめ配列はじめました。あるいは日本語最速入力環境を目指すお話

以前から、日本語入力をより快適にできないものかと思考錯誤していたのですが、このたび「つばめ配列」というのを始めたので、経緯も含めてご紹介したいと思います。

これまでの入力環境

まず、私の入力環境をご紹介したいと思います。

……と、ここまではまあ、大抵の方がそうであろうという一般的なものですが、キーバインドに関しては、かなりいじくり回しています。

  • キーバインド
    • 変更ソフト:XP環境で「窓使いの憂鬱」を利用して変更
    • 無変換キー:一回だけ押すとIMEOFF、押し続けると「窓使いの憂鬱」独自の補助キー
    • 変換キー:一回だけ押すとIMEON、押し続けると右Ctrlキー
    • セミコロン(;):Enterキーに割り当て。「;」自体を入力したい場合は「Ctrl+;」。

このキーバインドに関しては、禁断の快楽・変態キーバインドのお誘いの記事をかなり参考にしています。

配列そのものよりもこうしたキーバインドを変更してきたのは、日本語のような、かな・カナ・漢字・英字・記号、さらに半角・全角といった多種多様な文字を入力する環境では、IMEや配列変更よりもキーバインド変更が重要だと考えてきたためです。

上記キーバインドをすでに数年利用していますが、これをさらに幾つかのショートカットキー割り当てと組み合わせることで、以下のような便利な状況が実現できています。

  • 無変換キー(右Ctrl割り当て)を押したままで
    • Iキー:カタカナに変換(IME標準設定)
    • Oキー:半角に変換(IME標準設定)
    • Hキー:バックスペース(Emacsライク)
    • その他、Ctrlを使うショートカットが左手小指を伸ばさずに使えます。
  • 変換キー(独自補助キー割り当て)を押したままで
    • Hキー:カーソル左移動(Vimライク)
    • Jキー:カーソル下移動(同上)
    • Kキー:カーソル上移動(同上)
    • Lキー:カーソル右移動(同上)

これら設定により、Enter(;)、バックスペース(変換+H)、Ctrl(変換)、カーソルキー(無変換+HJKL)、半角全角キー(無変換・変換)などの手を伸ばさないといけないキーが、すべて()内のごく手近なキー入力で代替できます。

タイピング速度の向上ではなく、現実的な日本語入力速度をどこまで高められるか、ということを念頭において設定した結果がこれです。
もちろん人によって合う・合わないはあると思いますが。
とくにEmacs的な設定とVim的な設定を混ぜたりしてるのは、人によっては拒否反応が出るかもしれません。が、自分にとっては非常に合理的な設定になっています。


さらなる改善を目指して

IMEは現状維持

さて、そんなわけであれこれ設定をしてきましたが、上記設定にも数年経ってすっかり慣れて(職場も自分のPCは上記設定にしています)、さらなる改善を目指したくなりました。

となると、残るはIME変更もしくは配列変更です。

まずIMEに関しては、以前ATOKを使っていたこともありますが、いまは新しく購入コストをかけたくないので却下。

また、以前SKKSKKIME)を試したこともあるのですが、どうにも漢字と日本語を区切るという視覚ベースでの区切りに慣れませんでした。
自分はやっぱり文節区切り(音声区切り)で考えて文章を打っているので、入力方法を変更すると文体も変わってしまうと思います。それが良くなるか悪くなるかは分かりませんが、ちょっとリスクが高いかな、と。

それからSKKの場合、日本語・漢字の切り替えにおいていちいち補助キーをひとつ同時に押す必要があるため、タイプミスが増える感じもしました。(これは慣れの問題かもしれませんが)。

そんなわけでIME変更を諦めると、残りは配列変更になります。

色々な配列を検討

まず日英まとめて配列を変えるものとしては有名なDvorakがあります。いわゆるQWERTY配列のかわりになるものです。が、いきなり英語配列まで変えるのはさすがに抵抗があり、これはいったん保留に。

その後、Wikipediaの配列ページを見たりとか2chのスレをのぞいたりして、色々な配列を知っていきました。
途中、飛鳥配列とかHybrid月とかも惹かれたのですが、最終的につばめ配列と月配列が候補に残りました。

中指前置シフト新JIS「月配列」

月配列はマイナー配列のなかでは比較的人口が多いこと、それから有志の手で改良検討が重ねられているという安心感、かな入力なので打鍵数が少ないといったメリットに惹かれました。中指シフトなので、現在使っている変換・無変換のキーバインドも変えなくていいですし。

で、DvorakJというソフトで配列を変更してしばらく試したのですが、どうにも合わない。
単純に練習時間が足りないというのもあるかもしれないですが、打っててあまり気持ちよさが感じられません。
「月配列こそ入力の楽しみが本当にわかる」的なことが書いてあるブログもあってかなり期待したのですが。

それと、自分がQWERTY以外を試そうと思ったきっかけとして、ミスタイプを減らしたい、と思ったのがあります。思考の速度に指がついてこない、と感じられることが多々あったからです。

ですが、結局のところ(四段ではないにせよ)キーボード三段を使う配列の場合、指が上下左右に動きまくることから、入力ミスが同じぐらい起こるように感じました。

なお、以上はあくまで練習不足の人間の感想です。
月配列も慣れればそんなことはないのかもしれませんし、より高速にミスなく打てるようになるのかもしれません。月配列ご愛用者の方々はどうか気を悪くしないでください。


つばめ配列

つばめ配列とは

キー配列第3開発室(つばめ配列開発元)

最後に残ったのが「つばめ配列」ですが、これはまだ出来たばかりの配列です2005年から開発が続けられており、2011年2月につばめ2.0が公開されています。(雑記/えもじならべあそびよりリンクをいただいて間違いに気づきました。そして作者のmikadoさん、出来たばかりとか書いて申し訳ありません)。

私もよろしければ配列について教えろ10スレの最初のほうで紹介がなければ、試そうとは思っていなかったかもしれません。

そのスレから引用しますが、つばめ配列の特色は以下の一言で言い表せます。


ASDFJKL;だけで入力できたらいいよね。例:つばめ配列

つばめ配列は、ホームポジションからほぼ指を動かすことなく入力することをもとに開発された配列です。

正確には上記引用文中にある「ASDFJKL;」だけでなく「GH」も利用しますが、とにかくこのキーボード二段目以外は一切使いません。(拗音拡張などで使おうと思えば使うこともできますが、私は使っていません)

で、どうやってこの10キーだけで日本語すべてを入力するのか。

まず、つばめ配列は、かな入力ではなくローマ字入力になります。
ですが、キーボード上に英語26文字のキーが別々に配置されているわけではなく、押すタイミングによってキーが変化します。

まず「A〜;」までの10キーには、「あかさたなはまやらわ」の行がそれぞれ割り振られています。たとえば「K」なら「か行」になります。
また「A〜G」「H〜;」のそれぞれに「あいうえお」が割り当てられています。

たとえば1打目で「K」を打った後に「D」を打つと、「K」には「か行」、「D」には「い」が割り当てられているため、「き」が入力されます。

このほか同手だと濁音になるなど幾つかの工夫がありますが、大まかな原則は上記の通りです。

あと同作者さんによる「ひばり配列」という完全にホームポジションから手を動かさない(GHを使わない)配列もありますが、これは小指シフトを使うので、個人的にはあまり合いませんでした。月配列しかりですが、他キーと一緒に押す、というのがあまり肌に合わないのかもしれません。

つばめ配列の魅力

前述の私の下手な説明でどれだけ分かってもらえるか心配ではあるのですが、つばめ配列というのはとにかく合理的な配列です。清音だけなら確実に左右の手を交互に打つ交互打鍵(入力リズムが良くミスが起こりにくい)になりますし、また「K」は「か行」、「S」は「さ行」など、QWERTYを踏襲しているので覚えるのも楽です。

そしてなにより、指を上下左右にほとんど動かす必要がないので、タイプミスが起こる可能性がぐっと減らせるはずです。
私自身まだまだ練習中ですが(ごめんなさい、この文章はまだQWERTYで打ってます)、しっかりマスターすればほぼタイプミスがなくせるのではないか、と思ったりします。

あえて難点を言えば、「じょじょ」=「SDDSSDDS」といった入力時に少し指が動きづらいことでしょうか。

あと、かな入力に比べれば当然1文字を打つのに2打必要ですから時間はかかります。
しかし、タイピング速度ではなく、現実的な日本語の文章を大量に打つことを考えた場合、キーの打鍵数による疲れよりも、入力ミス修正にかかるストレスの方が大きい、と私は思っています。

たとえ打鍵数が多くても、ミスなくすらすらと文章を打てたら、日本語の入力環境として最適なものになると思います。(実際、紙にペンで文字を書く場合、書き仕損じることというのはごくたまにしかありません。それを再現したいです)

また「1234567890」といった数字もホームポジションのまま打てることに加え、1段目と3段目のキーが自由になるので、ここに好きなショーットカットを割り当てられます。
現在はまだ検討段階ですが、括弧や「!」「?」などの日本語で多発する記号、それからESCなどを割り当てることで、より指を動かさない環境が実現できるのでは、と思っています。

それとセミコロンに割り当てていたEnterキーが使えなくなりましたが、これに関してはCtrl+J(変換+J)で代用しています。

私は人より手が小さいということもあり、本当にこの二段目だけですべてを完結させようとするつばめ配列は感動する発想でした。
できれば今後、月配列ぐらいに普及していってほしいなー、と思ってこんな記事を書いてみました。

つばめ配列はまだ一日に数十分練習している状況ですが、今後どのくらい上達したかもいずれまた記事にできればと思います。